観測小屋を建てる by 齋藤悠紀

 朝から搬入。

 作品を並べてみる。伊勢丹で出していた作品もちょっと印象が違う気がします。制作用銅版と体験用銅版の机を準備して、道具を並べコーヒーを淹れると少しだけ画廊が自分の制作スペースになってきた気がします。

 

 打ち寄せる波満ち潮渚の音古い貝殻さらさら砂になったもの目がくらくらする満天の星ぐるぐる回る。

 ちょっとずつ描くのがじわじわくる、いい。

 

 その隣は体験銅版ということにして、小さな銅版を用意し置いてみました。

 銅版ってはっきり言って楽しいんです。ちょこちょこ引っ掻いて針先から版の物質としての抵抗を感じたり、版をどう腐食液に浸けるか試すのは秘密の実験のようでゾクゾクと自分のどこかをくすぐられます。そういう感覚は今でもワークショップのようなものをやってみると初めて銅版を触った時のような思いがすぐに蘇ります。自分の作品のテーマや展覧会として発表することとか一時忘れてしまうくらい夢中になれます。銅版制作の工程の中でも版を作る時が一番夢中になっている。

 どんな風な溝として版に刻印されるかという期待をしつつ目の前で何かが生まれていく楽しさ、作者の自己満足は「つくってみよう」の原動力だと思っています。そんな良さと、版そのものが雄弁に語ってくれるという銅版制作そのものの特徴を版画専攻でない人に体験してもらうつもりで始めてみました。 

 今日は3人描いてくれた。好きな道具を使ってどうグランド(防蝕膜)を剥がすかが今回出来る全て。1枚の銅版に30人くらいは出来そうです、自分の制作と並行してこちらもどうなるか楽しみです。